マツはなぜめでたいのか?
生命力を感じさせる常緑樹
マツはめでたい植物です。
松竹梅の最初もマツですし、千年生きる鶴がとまっているのもマツの枝です。お正月に
は門松が飾られますし。結婚式でおなじみの謡曲『高砂』に歌われているのもマツです。
とにかくマツは、めでたいのです。
それにしても、どうしてマツはめでたいのでしょうか。
すべての行き物が死に絶えてしまったかのような冬。そんな厳寒の中でもマツの葉は色
あせることなく、青々としています。この生命力に、人々はマツを不老長寿のシンボルと
称えたのです。
冬に自ら葉を落として、水分の蒸発を防ぐ「落葉樹」は、冬越しに適した新しいシステム
です。 一方、落葉することなく、寒い冬の間も葉をつけている「常緑樹」は古いタイプ
の植物です。しかし、人々は常緑樹に神々しい生命力を感じました。
常緑樹のサカキは、漢字で木編に神で「榊」と書きます。そして神社では神聖な植物として
玉串などに利用されるのです。一方、お寺ではシキミが墓地などに植えられます。この
シキミも常緑樹です。キリスト教のクリスマスではセイヨウヒイラギが飾られます。また、
ヨーロッパモミの木は神聖な木としてクリスマスツリーになります。このセイヨウヒイ ラギやヨーロッパモミも常緑樹です。また、節分に飾られるヒイラギも常緑樹です。このうに、人々は冬に青々とした葉をつけている常緑樹に惹かれずにはいられなかったのです。
しかし、たとえ古いタイプであろうと、常緑樹にも冬の寒さに耐える工夫はあります。…
―「面白くて眠れなくなる植物学」より抜粋―