こんにちは、お庭番の市川です。今回はご両親の代からお庭にある大切な樹を守りたい!という、お悩みの解決事例をお届けします。
平塚市外のS様邸にて樹木の生育確認のご依頼を頂きました。樹木はウメ。毎年沢山の花実を付け、ご通行の方にも愛でられているという皆に愛されている樹木のご相談でした。
このウメの木ですが、根元のところには洞(ウロ)が入り、樹皮も裂けているため正面から見ると反対がわが見えてしまうような幹の状況でした。ご依頼者S様は幹の中を虫が食べてしまって枯れてしまうのではと思われたようです。
結論から申しますと、このウメの木は、まだまだ数十年は生きていける状況です。
先代から受け継がれた木であり、思い出の詰まった木との事でしたので、ご依頼主様はご安心なされたようです。
では何故大丈夫なのか。
ウメというのは非常に強い木で樹木の芯の部分が腐ってなくなっても樹皮の部分いわゆる形成層という部分で養分や水分を十分に枝先に送り普通に生きてゆく事が出来ます。腐った部分があると樹皮にも影響が出るかと思われますが、その部分は木自体がしっかり壁を作り、影響がないように自分で自分を守ります。(ウメでなくても大丈夫な樹木はたくさんあります。)
ウメは「サクラ切る馬鹿ウメ切らぬ馬鹿」の言葉の通り、枝を切る頻度が多い樹木です。故にその切り口から幹の芯の部分に水が入る確率が高くなり、中心部を腐ってしまう事が多くあります。そういう状況になりやすいので、とても洞の入りやすい樹木なのですね。
ではそのままにしておいて大丈夫なのか?という事ですが、これはやはりダメなのです。
今回もそうでしたが、ウメの木というのは上部でたくさん枝分かれをしていて、上部に重心がある事が多いのです。
という事は、根元が皮一枚で、上が重いという状況になってしまっています。こういう状況ではいわゆる風などによる樹木の搖動が激しくなった場合に、ボキっと根元から折れてしまう危険があります。倒れた時の周囲の構造物に損害が出ることも問題ですが、まだまだ生きられるのに、折れた為に枯死してしまうというというかわいそうな状況になってしまいます。薄い皮にとって良くないのは、前後左右の動きもさることながら、特に問題なのはひねりの状況が発生した場合です。木の繊維が複雑にうねり折れやすい状況を作ります。こういった動きを抑えることが、その樹木の命を存える事の肝になってきます。
これを解決するのは、樹木支柱になります。竹や丸太を使った支柱をよく見かけられると思いますが、今回の場合はより丈夫な丸太の支柱の方が最適であると思われました。支柱に使用する丸太はタナリス注入材というもので、いわゆる防腐剤の入った梢丸太です。
今回のご依頼主のウメは腕のように長い枝がありその先でまた枝別れがあり、芯の幹の方も上部で二つに大きく分かれ、それぞれ上部に重心を持っています。(もっと長い腕の枝があったそうですが…)樹形としてはとても個性的でいい枝ぶりです。皆さんに愛される訳も分かる気がします。
重心を複数持っているという事は、単純に3本を組み合わせた支柱一か所では不十分で、重心それぞれに支えを作らなければいけません。
まずは、長く伸びた腕の下から支える方杖支柱を設置、その上の枝が触れないように丸太をクロスするように設置、本体側二股の2か所それぞれに重心がぶれないように丸太を設置という風に、ブレの起きないようにポイントを押さえて設置をしました。今回問題だったのは、駐車場に伸びた枝でした。通常は外から内に木が倒れないように斜めに設置するのですが、コンクリートの駐車場でしたので、丸太が下に刺さりません。枝垂れの樹木などに行うように根本から枝先に通常とは逆の支柱を2か所取り付けました。
職人の技術を駆使して、何とか樹木の振れを止めることが出来ました。
これで多少の大風が吹いても大丈夫。ご依頼主も一安心です。ご近所の方の中にいろいろアドバイスをしてくれる方がいらっしゃるらしく、樹木を中心にコミュニケーションが広がる。いい街だなぁと思いました。弊社の経営理念の中にも‛花と緑のエネルギーを活用し快適で潤いのある生活シーン空間を提供する’というくだりがあります。こうした皆に愛される樹木を見、関わっていくことが、ああこういう事だったのだなと実感できる瞬間でもあります。
切ってしまう事は簡単ですが、多くの思いの詰まった木はなかなか切れないものです。
費用を掛けられるものであれば、何とか生かしてあげたいですね。今は安全第一となって多くの木が伐採されています。誰も責任は取れないですからね。自分たち木村植物園も協力できることは精一杯力を尽くして協力していきたいと思っています。
同じような悩みをお持ちの方は、一度、木村植物園にご相談ください。何かのお役に立てると思います。
また次回以降もいろいろな事例を紹介してまいります。
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