ご自身でできる害虫対策 お庭のプロが教える美しいお庭を保つコツ

お庭の植木を眺めていたら…げげ!虫と目があってしまった!

お庭の植木を眺めていたら…げげ!虫と目があってしまった!なんてことないですか。
気付いた頃には大量発生していて既に葉っぱがスカスカな状態に…なんてこともしばしば。
そんな悩める君たちに木村植物園お庭番が、病害虫対策のノウハウを一挙大公開!
これを見ればあなたも快適なガーデニングライフを過ごせること間違いなしです。

「植木が元気に育つには…」:生育に必要な条件

本来、木は森や山のような自然の中で育ってきました。太陽をめいっぱい浴びて大きく成長した木の下には日陰を好む植物が生き生きと生長しています。やがて寿命がきた樹木は虫や微生物によって分解されキノコの寝床になって役目を終えます。
それは自然の摂理で、人の手を加えないでも循環が成り立っているのです。
しかし私たちは「自然の中で暮らす」と言うよりも「住環境に植木を持ってくる」事を選びました。それは出来るだけ自然に近い形に育てるのがベストですが、限られたスペースの中で自然と同じ循環を作りだすのは非常に困難です。
そこで重要なポイントをおさえて条件を満たす事で人も植木も快適な生活が送れるようなお庭作りをご提案しております。

ポイント①日当たり

日当たり画像

樹種によって日向を好むもの、日陰に強いものがあり特性に合った配置をすることが植木を元気に育てるための第一歩です。日当たりと言っても西日は植物にとって強すぎるため、乾燥や葉焼けの原因となるので要注意です。

ポイント②水やり

水やり画像

これも樹種によって乾燥に強かったり、湿潤な環境を好んだり様々なので一概にたくさん水をやってれば大丈夫な訳ではありません。ただ多くの植木の共通点としては、こまめに少量の水をやるよりは、一度にたっぷりの水をあげた方が植物は元気に育ちます。自然の雨も毎日降るのではなく、一度に長い時間降る事が多いのと同じように。

ポイント③土壌環境

土壌環境画像

酸性土壌とアルカリ性土壌の違い、砂質と粘土質の違い等、樹種の特性に応じた土づくりが重要ですが、共通して言えるのは大小様々な粒が集まってできた団粒構造をした土壌であれば保水性・保肥性・排水性を兼ね備えた万能な土壌となります。反対に地中に大きな石がたくさんあるとどんな植木にも悪影響を及ぼします。

ポイント④病害虫対策

病害虫対策画像

全ての植木に共通して、マイナスにしか働かないのが害虫と病気です。まだまだ元気に育てたいのであれば、「見つけたら早急に駆除」と「発生する前の予防」が大切となります。大量発生・増殖するのを防ぐためにも、日々植木の状態を確認し葉の裏をチェックすることが大きなカギとなることを忘れないでください。

「実は良い虫、悪い虫?」:害虫と益虫

虫と言っても全ての虫が植木にとって悪影響を及ぼす訳ではありません。害虫はその名の通り「害のある虫」。では害のない、植木にとって有益な虫のことは「益虫(えきちゅう)」と言います。例えばどんな益虫がいるのでしょうか。

益虫①ナナホシテントウ:肉食でアブラムシやハダニを食べてくれます。

ナナホシテントウ画像

益虫②ウスバカゲロウ:蚊などの小さな虫を食べてくれます。

ウスバカゲロウ画像

益虫③アシナガグモ:水田などで稲の害虫を食べてくれます。

アシナガグモ画像

それでは本題の、「害のある虫」害虫をいくつか挙げてみましょう。

害虫①アブラムシ:葉の裏や新芽や蕾や花など柔らかい部分に群がります。

アブラムシ画像

害虫②ケムシ類:毛細刺を体中に持ち、触ると痒くなり葉を食害します。

ケムシ類画像

害虫③イラガ:触ると電気が走ったような痛みが続き、葉を食害します。

イラガ画像

害虫④テントウミノハムシ:幼虫・成虫ともに葉を食害します。

テントウミノハムシ画像

害虫⑤カイガラムシ:固い殻に覆われた体で葉や枝から栄養を吸汁します。

カイガラムシ画像

やはり益虫よりも害虫の方が数も多いし身近なものが多いですね。こういった害虫を見かけたら広がる前にすぐに対処しましょう。

「潜んでいる恐怖!」:目に見えない害虫

上記では目視で確認できる害虫を紹介しましたが、それ以外にも目に見えない程小さな害虫や幹の中や地中に潜んでいる害虫も多く存在しています。見えないから安心してしまいますが、見えないからこそ水面下で被害が進行していて、ある日急に木が枯れてしまった!なんてことになりかねませんので、より注意が必要な害虫です。

幹の中の害虫①
テッポウムシ( カミキリムシの幼虫):幹の中に潜んで枝の内部を食害します。

カミキリムシの幼虫画像

土の中の害虫②
コガネムシの幼虫:地中に潜んで根を食害します。

コガネムシの幼虫画像

虫の中の害虫③
マツノザイセンチュウ:カミキリムシの中に寄生して潜んで松の木を枯らします。

マツノザイセンチュウ画像

それぞれ何かしらの異常サインを出しているはずなので、それをいち早く察知して、早めの対策もしくは予防をする事が重要となってきます。

「今、こいつに注意!」:害虫の発生しやすい時期

害虫も生き物です。繁殖や産卵、過ごしやすい季節は決まったサイクルの中で生きています。ただ、害虫の種類によってそのサイクルが微妙に違うため、その時期に合った対策が必要となります。年間一覧表で害虫別の発生する時期を確認しておきましょう。

害虫の発生しやすい時期画像

この表を見れば、今どの害虫を注意して探せば良いのかが分かり、害虫も見つけやすくなると思います。

「驚異の感染力!」:病気の発生しやすい時期

植木の病気は菌が胞子を飛ばして繁殖する、非常に厄介な強敵です。しかしこれも繁殖するサイクルはある程度決まっているので、病気ごとの発生する時期を見極めて予防から感染を抑えるのがとっても重要なポイントとなります。こちらも年間一覧表を見ながら必要な時期に有効的に対策をとることが一番です。

病気の発生しやすい時期画像

見てわかる通り、発生しやすい時期はほとんどまとまっているため、全てあわせて対策をとっていく準備をしましょう。

「この子には気を付けろ!」:要注意な樹木

病害虫が付きやすい木とそうでない木があるのはご存じですか。虫によっても好みがあるようで、この木にはこの虫、この病気が発生しやすい、というのが実際にあります。その組み合わせをいくつかご紹介していきましょう。

①サツキ・ツツジ類→ツツジグンバイムシ

ツツジグンバイムシ画像

②ツバキ・サザンカ類→チャドクガ

チャドクガ画像

③サンゴジュ→サンゴジュハムシ

サンゴジュハムシ画像

④ソヨゴ・モチノキ類→カイガラムシ

カイガラムシ画像

⑤レッドロビン・モミジ類→イラガ

イラガ画像

見た事ある害虫や病気もあったのではないでしょうか。あなたのお庭にこのような植木があったら要注意なので、日々のチェックは欠かさずにするように心がけましょう。

「大事なのはマッチング♡」:害虫に効く薬剤の種類

害虫のことをよく知ったところで、それらの害虫に対してどんな薬剤を散布すれば良いのかは迷いどころ。害虫によって有効な薬剤は変わってきますので、こちらの早見表を確認して必要最低限の消毒で害虫をやっつけましょう。

害虫に効く薬剤の種類画像

※住友化学園芸㈱家庭園芸便利ガイド引用
時期や回数も重要なので、使用上の注意をよく読んで散布するようにしてください。

「処方箋、出しておきますね。」:病気に効く薬剤の種類

害虫の次は病気。こちらは殺虫剤ではなく殺菌剤を使用します。植木の病気はウイルス性の菌が繁殖して広がるものなので、一度発生してしまうと完全に駆除するのは中々難しいものです。しかしそのままにして放っておくとどんどん広がって木を枯らしてしまいますので、早めの対処で根気よく付き合っていくことが重要です。風邪薬でインフルエンザが治らないように、植木の病気にも有効な薬剤はそれぞれ違っていますので、こちらの早見表を確認してから散布するようにしましょう。

病気に効く薬剤の種類画像

※住友化学園芸㈱家庭園芸便利ガイド引用

病気は発生した環境が原因のことが多いので、その場所で育てていくのであれば病気と永く付き合っていくことを決心して根気よく薬剤散布を続けましょう。

「かけすぎ注意!」:薬害のお話

害虫や病気を早く駆除したい、早く治したいからと言って「濃い液で」または「何度も何度も」薬剤を散布してしまうと、害虫はいなくなるかもしれませんが今度は植木自体に悪影響がでて木が枯れてしまうという本末転倒な事態に陥ってしまいます。何事にも「適量」「限度」がありますので、そこに十分注意して散布するようにしましょう。薬品のパッケージに必ず記載してありますが、主な薬剤の希釈倍数・使用回数を紹介致します。

  • スミチオン乳剤:1000 倍希釈・年6 回以内
  • オルトラン乳剤:1000 倍希釈・年5 回以内
  • オルトラン粒剤:3 ~ 6kg/10a・年5 回以内
  • ダコニール:1000 倍希釈・年6 回以内
  • トップジンM 水和剤:1000 倍希釈・年5 回以内

薬害にあったサンゴジュ↓

薬害にあったサンゴジュ画像

サンゴジュハムシの駆除のため濃い液で何度も散布したそうです。こうなってしまったら植木はもう復活しません。大事な植木を枯らさないためにも、気を付けましょう。

「やってみよう!」:散布に必要な準備

さて、基礎知識を得たところでさっそく実践と参りましょう。まずは必要な道具から。

  • 薬剤:混ぜても良い薬剤とダメな薬剤があるので事前に調べよう。
  • 散布機:広い範囲の場合は電気や燃料で動く動力噴霧機を用意しよう。範囲が狭いなら手押しポンプ式の圧力散布機を用意しよう。さらに範囲が小さい場合は霧吹きでもOK。
  • マスク:飛散した薬剤を吸いこまないように口を保護しよう。
  • ゴーグル:飛散した薬剤が目に入らないように保護しよう。
  • 手袋:薬剤が手に付かないように保護しよう。

そして最も注意しなければならないのが散布する周囲の状況です。

  • 車がある場合…塗装に影響が出る場合があるので遠ざけよう。
  • 洗濯物がある場合…服に臭いがついてもう一度洗わないといけなくなるので事前に取り込んでおこう。
  • お隣の窓が空いている場合…部屋の中に薬剤の臭いが入ってしまうので閉めてもらおう。
  • 魚やペットがいる場合…ペットは家の中へ。池や水槽にはシートを被せてかからないようにしよう。
  • 風が強い場合…必要な物にかからず別の物に飛散しやすいのでそんな日は避けよう。
  • 雨が降りそうな場合…2 ~ 3 時間経たずに雨が降ると効果が薄れてしまうので避けよう。

散布の仕方のポイントは虫は葉の裏側に潜んでいる事が多いので、ノズルを逆さに向けて葉の裏までしっかり薬剤を吹きかけると良いです。また、ドリフト(散布した薬剤が対象物以外に飛散すること)を防ぐために、対象物からノズルをあまり離し過ぎないように散布するのも重要なポイントです。

「日当たりと風通し、これ重要!」:薬剤を使わない病害虫対策

ここまで薬剤散布での病害虫駆除をご紹介してきましたが、根本的に発生しにくい環境を作ることが最も有効な病害虫対策となります。
本来日当たりと風通しが良ければ害虫も病気も存在しにくいため、発生を抑えることができます。では日当たりと風通しが良い状態にするにはどうしたら良いか…そう、剪定です。定期的に剪定をして混み合った枝を透かし、内側の枝葉まで日と風を通すことによって病害虫の発生しづらい環境を作る事ができます。それだけでなく、花付き実付きも良くなりお庭が明るくなって良いことがたくさん重なります。ぜひ、剪定は定期的に実施しましょう。

「プロに任せて安心!」:お庭の年間管理

剪定をすると言っても、「どの枝を切ったら良いかわからない」「樹高が高くなってしまって届かない」「いつ切れば良いのかわからない」「そもそも道具が無い」「これまで頼んでいた人ができなくなってしまった」など、様々な理由で剪定を後回しにしてしまってはいないでしょうか。そんな方のために私たち造園屋さんがいます。単発での剪定・除草・消毒作業はもちろんのこと、年間管理をお任せいただければ適正な時期にあなたのお庭に合ったプランで無駄なく快適なお庭を維持することができます。もう手に負えなくなったお庭でお悩みの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。